ただ単に垂直軸と水平軸へ信号を加えただけでは、蛍光面(スクリーン)の波形を安定した静止状態で観測することはできません。両方の信号の周期のタイミングを合わす、つまり、同期をとる必要があります。
電子ビームを掃引(水平方向に振らせること)するにはノコギリ波を用いますが、同期をとるためには、垂直軸へ加える信号電圧のどの部分で(あるいは、どの時点で)ノコギリ波をスタートさせるかを決めることと、それを正確に繰り返すことが必要です。
オシロスコープ (Oscilloscope) |
この同期には、同期掃引方式とトリガ掃引方式の2種類があります。
同期掃引方式
この方式は、掃引用のノコギリ波を発生させ、蛍光面(スクリーン)の波形を見ながらその周波数を手動で調節し、波形が静止して見えるように同期をとる方式です。
静止して見えるためには観測する信号の周波数と掃引用のノコギリ波の周波数が整数比の関係を保っていることが必要です。
それには観測信号の周波数成分を取り出し、それを同期信号としてノコギリ波の発生周波数が整数比になるように手動で制御するわけです。
このため、観測信号が無くなると、ノコギリ波の発生回路固有の周波数でノコギリ波が発生し、蛍光面(スクリーン)では水平に輝線が1本描かれます。
この方式は電子回路の構成が簡単ですが、安定度や高精度のニーズに応えられず、現在では低周波測定用として少数が使われているようです。
トリガ掃引方式
同期掃引方式のノコギリ波発生回路が観測信号の有無に関わらず動作しているのに対し、この方式の特徴は、観測信号が無い時にはノコギリ波は発生しません。
観測信号が入ってくると、その信号の一部を同期信号として取り込み、それからトリガ・パルスを作り、ゲート回路を通してノコギリ波の発生回路が初めて動作しノコギリ波が1個発生する仕組みになっています。
連続的に信号が入ってくると、その度にこの動作を繰り返し波形が次々と描かれることになります。
つまり、観測信号が入ってくるとノコギリ波が自動的に発生し蛍光面(スクリーン)に波形を描くわけで、同期掃引方式のように手動で波形を静止させる必要がありません。
このトリガ掃引方式では、発生するノコギリ波の周波数を観測する信号の周波数とは無関係に決められるので、波形の一部分だけを蛍光面(スクリーン)に描くことも簡単にできます。
トリガ掃引方式が同期掃引方式に勝る
トリガ掃引方式は、垂直軸の電圧目盛や水平軸の(掃引)時間目盛の精度が同期掃引方式に比べて格段に優れています。しかも、波形の任意の部分を描くことができ、1回しか発生しないような現象や、非常に高速で変化する現象も簡単に観測できる優れものです。
それ故、現在ではオシロスコープの殆どがこのトリガ掃引方式です。
0 件のコメント:
コメントを投稿